2011年12月30日金曜日

ポジティブな強さと君とひととき

出会いとは本当に突然。偶然時間が合ったからというだけの理由で飛び込んだ渋谷シネマヴェーラにて特集「映画史上の名作」からエルンスト・ルビッチ監督の「君とひととき」を観てきました。

映画館で白黒映画を観るのは、かなり久し振り。午前十時の映画祭で観た「シベールの日曜日」…いや「ハスラー」以来かな。その日はすでに映画二本のはしごした後だったし、白黒映画で1932年の映画だし、全然知らない古い映画なので、よもや寝てはしまいだろうかと不安だったんですけど、全くの杞憂でした。

君とひととき

あらすじ:パリっ子の粋なお医者さんアンドレ・ベルティエは美しい奥さんコレットをもちろん愛している。そして至極仲睦まじく円満に暮らしているのである。ところがある日アンドレはタクシーの中で美しい夫人と偶然知り合いになった。その夫人と言うのは彼の愛妻コレットの親友ミッチであることが判った。そんな愛妻の親友ミッチから積極的な誘惑をされてしまい…?一方で、アンドレの親友アドルフは、ベルティエをずっと想っていて…?

ルビッチの代表作と言われる「結婚哲学」をトーキー映画としてリメイクしたものがこの「君とひととき」という映画だそうだ。名前だけはなんとなく知っていたけれど、全然作品を見たことがなかったルビッチ。今年は、クロード・シャブロルという肌に合う監督に出会えたことの衝撃をずっと忘れられなかったわけだが、また肌に合う監督さんに出会ってしまった。

物語は、単純にして実にお馬鹿なお話でした。けれど、大好きなウディアレンで親しみのある画面に向かってしゃべり始める語り口、観客に対するちょっとした目の配らせ方、セリフの気持ちのいい掛け合いや皮肉の上手さ、奥行きのあるような味わい。実を言うと作品によっては苦手なミュージカル映画なんだけど、歌になったらついついにやにやしちゃうくらいおんなじフレーズを何度も繰り返すところとかも最高に楽しくて可笑しかった。

やはり古い映画だから、今に比べたら色々制約があって粗があるんだろうけど、粗なんてびっくりするほど振り返ってみてもわからないくらいに引き込まれてしまってました。浮気の誘惑に駆られるアンドレと一緒になってもがきあえいでしまう始末です。妻のベルティエはどこまでも可愛く愛おしいし、誘惑してくるミッチの小悪魔っぷりたらもうないし、こうアンドレに感情移入させられるというか一緒になってピンチになってしまっている感、役者たちの素晴らしさに加えて、ルビッチの手腕なんだろうなって思うと艶笑喜劇の神様と言われるだけの所以を感じ取れたような気がしました。

「君とひととき」の最後は、実に可笑しいハッピーエンド。悲惨?お馬鹿?シニカル?な物語で、これからの展開どうなるんだろうとか思っていた最後の最後、本当にしてやられたなーともう最高でした。

強い。この映画の終わりに象徴されるようなポジティブな強さは、凄く気持ちがいい。今年のベスト1に「ブルーバレンタイン」を挙げてしまったせいか、まぁ「ブルーバレンタイン」は前向きな終わり方だったと思ってるんですけども…やっぱりポジティブに強くはなれない映画だったとは思うので、今年の締めくくりに「君とひととき」を観れたことはとても価値があったなーと思えてます。いやー。

来年の三月にDVD化されるみたいだから、絶対買うしかない!
あと来年は、この映画を観て肌に合うと思えたルビッチ監督の作品を色々観るようにしたい。勝手に自分で特集組むぞ!と意気込んで…皆さん、よいお年を

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