2011年8月14日日曜日

トッカータとフーガを親子で弾くあのシーンだけでもう

今年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した作品。パルムドール作品が、規模大きくたくさんの劇場で上映されるのでとても珍しいです。これだけの規模の公開とたくさんの話題呼びと集客をしてしまうブラッド・ピットとショーン・ペンは偉大だ。

「ツリー・オブ・ライフ」

あらすじ:かつて父が望んだように仕事で成功を収めたジャック。けれど何を成し遂げても、誰と一緒にいても憂いに沈んだその心が晴れることはない。1950年代にテキサスで過ごした少年時代の記憶を手繰り寄せれば、人も自然も愛しなさいと優しく諭す母と、抜け目なく立ち回れと厳しく教える父がいて、弟たちと共に父の怒りを買っては恐れおののいた日々がよみがえる。絶対的な君主である父は畏怖と憎しみの対象だった。


宗教というと正直わからないですが、宗教色の強い映画であると思います。この時点でかなり人を選ぶことは言うまでもないと思いますが、それ以前にまずパルムドール作品であるということも忘れてはいけないです。パルムドール作品というと少し賛否でいうところの否が多いような作品に賞を取らせたがるきらいがあるように思えるので(難解というか癖というよりアクが強い)、まずパルムドール作品を今まで一作も見たことがない人には少し心構えが必要なのではないか、と思う。まぁそんなこと関係なく気にせずに味わって感銘を受けてもらえたら嬉しいな。

巨匠テレンス・マリック監督が崇高に詩的で観念的に描く「ツリー・オブ・ライフ」どういう想いを持つかはわからないけれど、絶対に見ておくべき作品であることは間違いないです。やっぱり一般受けしなそうというか、アクは強いですけども。


冒頭、旧聖書「ヨブ記」の引用がありました。
神は問う。私が地球創造の基礎を成し遂げた時、明星の星たちが瞬き唄い、神の子供たちが歓喜に叫ぶ時、汝はどこにいたのか?

ヨブ記に関しての知識があるわけじゃないんだけど、ざっくりヨブ記wikiを読んでみました。このwikiの下にあるヨブ物語がわかりやすかったんだけど、
 『ヨブ記』というのは、ヨブの試練とその回復の物語だが、単純な神の救いの物語ではなく、「人生の理不尽な苦しみをどう解釈したらいいのか」、「本当に神様のなさることはいつも正しく公平なのか」、「なぜ神様を信じるか」という人生の深い謎を取り扱った物語
なんだそうです。この映画、ある意味ではまさしくヨブ記なんだろうな。ブラピが演じる信仰深い厳格な父親はヨブであるとも取れる。

神様が救ってくれる、信じるものは救われるとよく言われるけど、実際宗教の良し悪しとか関係なく信じて救われてる人がいるならそれでいいよね。信じられないから胡散臭く思えちゃうけど。という割と雑に無宗教なスタンスを持ってて「信じているからこそ、救われない」って普通にあると思えてしまうような自分にとっては、ヨブ記で語られるテーマは、最初に宗教色は強いと言ったものの、じゃぁ「どうして信じられないのか」と逆転する形で心にずしんと来るものがありました。宗教的な噛み合わせはあるにしろ生きることとは生命とはなんなのか、という究極的でもあるテーマを描いてくれてる。

決して物語そのものが難解だというわけではなく、描かれてることは実にシンプル。父への嫌悪、愛情の空回り、理不尽な苦しみ、子供の死、愛や生きる意味への自問…。ただ起承転結がないと言っていいため、テーマ性がそもそも深いのもありますが、終りを提示してくれない物語に対して自分がどうこの物語を考えさせられるか、むしろ考えさせられたいのかで消化不良というか息の詰まる想いをします。

いってしまえば、この作品テレンス・マリックの抒情詩です。
序盤にあるイマジネーション映像の羅列、ここは一切の脈絡もなく美しく鮮烈な映像が目に焼き付けられます。そこに圧倒的な存在感をもって流れるクラシック音楽。アクの強さだけでなんかすんでないですよ、完全に監督が自分の世界に浸っていると言っていい。

そんな抒情詩的である、あの予告編の雰囲気が二時間続くような作品ではあるものの、正直眠くはなりませんでした。こういう作品眠くなって寝てしまえば、それまでなんですけど、一切眠くなりませんでした。めまぐるしく動くカメラ、映像美にクラシック音楽があいまって完全に陶酔させらてしまった。静かにこれまで浸っていていられる作品も珍しい。

特に予告編でも使われていたスメタナの「モルドヴァ」が流れてきた時の、震えっぷりは凄まじかった。本気で震えました。心の底から。こういう映画体験ってなかなかできないです、ハリウッドだけじゃないアメリカでもまだまだこういう作品が撮れるんだと嬉しさもこみ上げて感動しました。


わからないです、結局何が言いたかったのかも、一つ一つのシーンの意味も、手からこぼれ落ちてくかのようにつかめません。宇宙まで広がる壮大さと自身のちっぴけさと生命の大きさの前に、別次元で展開されてしまった感は否めないのですが、わかろうと思って理解できる映画じゃないんだと思うし、陶酔させられた、結局これが全て。

ブラッド・ピットは、今年オスカーあるかもね!それほど、父親役の彼は素晴らしかった。たぶんブラッド・ピットだけで見に行く人もそれだけで浸れるくらいに完璧な演技を見せてくれています。次男がめっちゃブラッド・ピットに似てて可愛かった笑

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