2011年8月7日日曜日

なによりもあの狂ったエレン・ペイジに慕われるなんて羨ましい

渋谷のシアターN、新宿の武蔵野館で絶賛公開中の

「スーパー!」

観てきました。
〈あらすじ〉さえない夫フランク(レイン・ウィルソン)は、セクシーでイカれたドラッグディーラー(ケヴィン・ベーコン)を追ってフランクの元を去った妻(リブ・タイラー)を取り戻すために、クリムゾンボルト(訳注:「赤い稲妻」)に変身! お手製のコスチュームに身を纏い、手にはレンチ。エッチでクレイジーな相棒ボルティー(エレン・ペイジ)と共に危険地帯の犯罪に立ち向かう。すべては愛する妻のため。でも世の中、思い通りにはいかないもの。想定外のエンディングに向け、クリムゾンボルトは猛ダッシュ!やっぱり男はつらいよ…。掟は大昔から決められていること。子供に猥褻な行為はしない。列に割り込んだり、車に傷つけたりしない。もし掟を破れば、クリムゾンボルトが許しません。

特殊能力を持たない素人ヒーロー映画というと、「キック・アス」がすこぶる評価でミニシアター系としては異例の動員、人気爆発っぷりだったことが記憶に新しいです。「キック・アス」のような映画かな?とお思いになってる方が多いかも知れないですが、この「キック・アス」と「スーパー!」やってることはほとんど同じと言っていいと思いますが、全く別物なのでご注意してください。

主人公フランクが妻を寝取られて、絶望の淵からTVで見たヒーローに感化され、神様から何を悟ったか、ヒーローとなって悪を懲らしめるわけですけども、、

キック・アスにしてもそうで、どちらも悪に立ち向かう方法としては、結局暴力でしかないんです。「キック・アス」における暴力の取り扱いは、ヒットガールという無茶苦茶な存在によって倫理や道徳なんてものを吹っ飛ばす究極の娯楽的バイオレンスとして仕上がってしました。そのため、終わり方に対して倫理的にどうなの、ハッピーエンドでいいのか。などと批判がありましたし、事実自分にもキック・アスはお気に入りで大好きな作品ではあるけれども違和感が残っていたんですよね。

対して「スーパー!」においては、コメディ色を持って毒を包み込む面はあるものの、倫理や道徳なんてふっ飛ばそうという気がない。むしろ、暴力で悪に立ち向かっていく主人公のフランクをある種の狂気として突き放してる。凡人でしかないフランクが絶望からヒーローにかこつけて正義という名の下にただ暴力を奮ってるだけなんですよ、しかも相手は、麻薬のディーラーなどといった犯罪者ではあるけれども、エスカレートした結果、列の割り込みや車に傷付をつけるといった間違ってるけれども、犯罪ともいいきれない人々に対しても暴力を奮ってしまってる。(笑えちゃうんで、不気味なんですけどこれこそ作り物である映画だからこその楽しみでもある。)

さらにイカれたエロくて気狂いな相棒ボルティの登場!!ボルティは、生粋のアメコミオタクで、倫理という倫理が吹っ飛んでしまってる…ああエレン・ペイジやばい。これで主人公が観客側に戻ってきて、行き過ぎた正義を目のあたりにするわけなんですが、フランク、あなたもそっち側でしたよ?っていう話になってこのあたりはヒーローを狂気として描いてる部分に主人公と観客ともどもきっちり向きあわせてくれてる。

いきすぎた正義がある種の暴力でしかないこと、狂気にしかならないこと。キック・アスが本来やるべき要素に向き合ってくれた
とこの作品についてtwitterで話してる時にお話してくれた方がいました。本当にそのとおりで、キック・アスへの違和感を「スーパー!」が吹き飛ばしてくれた。ここがなにより嬉しかったし気持ちよかった。

最後の方で、主人公のフランクが語る台詞に
目の前に写ってることが必ずしも真実とは限らない
というのがありました。

たしかに主人公フランクは、狂気の沙汰でしかなかった。狂気が伴う痛みは、敵味方関係なく登場人物たちそれぞれに降りかかっていく。結果、妻を守れたとしてもその先に待っていたもの、残った痛みが現実。彼はただの人殺しだし、頭のイカれた野郎でしかないのかもしれない。でも、彼はなりふり構わず妻を守りぬいたヒーローなんです。

癖が強くて、ノレない人にはノレないかも知れないけれど、自分としては大好きな作品。序盤のアニメーションから、コスチュームまで全てが愛おしくなる。あああ、傑作。


豪華俳優陣だけでも見る価値がありますが、中でもボルティを演じるエレン・ペイジが本当にやばいです。気狂いを完璧に演じていて、素晴らしい。エレン・ペイジが好きな人は、これ必見ですよ。(好きすぎて自分のtwitterのアイコンにしちゃってます)

シャラップ・クライム!!

0 件のコメント: